隠居月の雑多な書き処さん

ゲームの感想とか何となく書きたくなったことを雑多に文字にして放り込むところです。Twitterには投下したくないネタバレとかえっちなやつの感想とかも書きます多分。

【感想】ATRI -My Dear Moments-

以前にプレイしたATRI -My Dear Moments-の感想を書きたいと思います

後半部分にはネタバレを含む内容を書くため気になる方は前半を読んだらブラウザバックを推奨します。


まず私がこのタイトルに触れたきっかけ自体は割とたまたまだったりします。
当時はsteamで何か面白そうなゲームないかなーと探していたのですが、偶然体験版が配信されていたのが目に入ったのでそれをやって面白かったのと、
値段も2000円ほどの所謂ロープライス帯だったのもあり気がついたらダウンロードしていました。
実を言うとその後しばらくは他に色々ゲームをしていて放置してはいたのですが…()

ただクリアまでたどり着いてみると、シナリオもキャラクターも世界観も楽曲も素晴らしく噛み合っていて、正直2000円で買ったとは思えないような満足感がありました。
このタイトルを触ったのがきっかけでしばらく離れていたノベルゲームにまた触り始めたくらいにはよかったです。むしろ体験版面白かったのに何で積んでたんだ。


肝心の感想ですが、まあなによりもまずATRIがかわいい。これにつきますね。
ロープライスのゲームということもありますが、進行上所謂攻略ヒロインはATRIしかいないため、ATRIを好きになれるかどうかがこのゲームの最重要ポイントだと思います。
声はかわいい、見た目もかわいい、動きもかわいい、元気でちっちゃい、そんな愛らしいヒューマノイド、あるいはアンドロイド。それがこの作品のヒロインかつタイトルであるATRIです。
ゆさの先生描くATRIのビジュアルが私にぶっ刺さったのも大きいですし、主人公の夏生さんや他のキャラクターとの掛け合いの中でちょこまか動いて、時々プリプリ怒ったりテレテレしたりするのが非常にいいですね。
自分がこういう元気な雰囲気の女の子を好きになるとは思ってませんでしたし、実際今までこういう子を好きになった記憶があまりない気がします。年を経て好みの変遷でもしてきたのでしょう。なにはともあれATRIが可愛いことと、私の中でATRIがそれなりに大きな意味を持ったことは事実です。
世界観設定としても世界中が海面上昇によって沈んでいく退廃的な世界で45日間の物語を描いていて、そんな中で生きている人々の情景も美しいものでした。背景をわいっしゅ先生が担当されているのですが、Twitterやなんかでもたまにrtしている通りとても素敵な風景のイラストを描かれる方で、退廃的な世界観と完璧にマッチしていました。
私は以前からコミケにいくときはこの方のサークルがでているかはチェックしていたので、クレジットでお名前を見たときは思わずニッコリしてました。
とまあ、キャラクター、背景美術、楽曲などすべてを丸ごと好きになれた作品ということで非常に楽しくプレイできました。

あと、販売元がアニプレックスの関連会社だけあって公式HP見るとアニメーションPVがあがってます。
atri-mdm.com

動いてるATRIかわいい。
全年齢だしそのうちアニメ化もするのでは…?みたいな噂も聞きますがどうなんでしょう?アニメ化したら私は死にます。

楽曲面で言えばATRIの曲は松本文紀さんが担当されているのですが、
調べてみたところ有名なものではサクラノ詩のOP曲だったりグリザイアシリーズの楽曲も担当されているすごい方のようで、ATRIの曲も綺麗なものがとても多かったです。
よくあるのは声優さんなんかもそうですが、ゲームをしているとこういう作曲家さんとかライターさんについても気になって調べてみて、そこからまた新しいゲームをしたり広がるのはいいですよね。
余談ですが、サクラノ詩についてもプレイ済なのでそのうち感想とかを書くかもしれませんが、テーマ部分を自分の中で整理しきれていないので時間かかるかも…


あとこのゲーム、最新のゲームだけあってシステム面も非常に充実していたかなと思います。
ATRIの後から5本以上はノベルゲームをしてきたと思いますが、ほとんど数年前のゲームばかりしていたとはいえ個別の台詞までお気に入りとして保存して後で聞けるようにしてたのはATRIだけでした。最近のゲームでも台詞保存ってやってる会社あるのかしら?
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一応シーンは隠してますが、これかわいいなーと思った台詞を保存していったらなぜか怒ってる台詞とかびっくりしてる台詞ばっかりになってた気がします。かわいい女の子に怒られてもかわいいものはかわいい。それはそれとして反省はしないとね、拗ねちゃったらかわいそうだし。

そんな感じで、私としてはATRIという作品は非常に面白く興味深くプレイしていました。
面白かった~しか言ってませんが考察とかもうちょっと深いところで思ったことを絡めるとうっかりネタバレかましてそうなのでその辺は後半で。

このゲーム自体はsteamだけでなくDMMでも配信されてますし、DMMのサービスでブラウザでゲームが出来るようなのにも確か対応してたはずなので触りやすいと思います。
体験版もあるので気軽に触ってみて面白ければちょっと手を出してみる、がしやすい価格設定でもあるので、興味を持った方は是非に。
Amazonとかを探すとゲームディスクがセットになってるサントラも売ってたと思うので、現物でほしい方はそちらもどうぞ。

以上ネタバレなし感想でした。

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【注意】
以降ネタバレを含む感想になります!
未クリアの方やネタバレを気になさる方はブラウザバックをお願いします。






















































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はい、というわけでここからはネタバレを含む内容とちょっと説教くさい内容(?)を書いていきます

総じてATRIの感情表現がとても魅力的で、そこだけでも素晴らしい作品でした。
が、それに加えてさらに中盤で夜にATRIと夏生さんが互いに語らうシーンが特に印象に残っています。
ATRIに対してある問いを投げかける夏生さんと、それに対するATRIの答えとその理由、
何より夏生さんへの思いが込められた言葉に強く心を動かされました。
このシーンでのやり取りは終盤の流れにも絡んでいて、この作品の中でも特に好きなシーンの1つかもしれません。
まあ全部好きなのですがそこはそれとして。

それから、ATRIという作品を通して心を持つロボットという在り方に強く興味を引かれました。

ATRIは所謂ヒューマノイドとかアンドロイド、ロボットと呼ばれるものですが、そういうキャラクターが登場する作品でよく挙がるロボットの心とは何か?という問いかけを、この作品もまた同じように問いかけてきたと思っています。

夏生さんとATRIが出会うシーンから人間と同じようにやりとりをするATRIが描かれ、ことあるごとに高性能ですから!と主張したり、夏生のしている物言わぬ義足(公式HPにもあるとおり彼は義足です)に対抗心を燃やしたり、ポンコツロボットだのロボ子だのと言われたときには「ロボットへの蔑称です!」とプリプリ怒ったり…。
見ている限りでは人間とやり取りしているような気分になりますし、とても微笑ましい時間が過ぎていきます。

ただ、実はそんな彼女もロボットであるが故に自分に心があるとは思えずにいましたし、彼女にとっては心とは何であるのか、ということは理解不能なものでした。
シナリオ中でもそんな彼女と夏生さんとがすれ違うようなシーンもありますが、読み進めている側の私のメタ的な目線ではやはり彼女に心がないとは思えませんでした(実際そうであることも明かされるのですが)
ATRIのロボット然とした振る舞いの中からでも、ふとしたやりとりに彼女の感情や思いを感じましたし、それ私怨では?というものが見えたりしてクスッとした場面もあり、ただただ2人のすれ違うやりとりを微笑ましく見つめていました。
また、ネタバレあり乾燥の冒頭で少し触れたあたりのシーンでATRIが夏生さんを諭す際に口にした「未来を捨てないでください」という台詞とのその前後の部分はとてつもなく印象に残っています。これも彼女に感情があったからこそ響いた言葉だと思いますし、このシーンがあるからこそ終盤~TRUE ENDの流れもより映えるのだと思います。なにより、私の中でこの作品が強く印象に残ったのはこの部分で描かれていた内容が大きな理由でもあります。

後に彼女の過去が明かされたり一悶着が落ち着いて、やっと幸せな時間を過ごせるかと思いきや、ロボットであるATRIにもまるで人間のそれと同じように寿命が設定されていました。その寿命を迎えると機能停止してそれまでの記憶も失われるようになっているため、実はもう時間が残されていませんでした。
(この流れ、まったく書かないとそれはそれで分かりにくいので書きましたが本筋がザックリでも見えちゃうのは考え物ですね…)

さて、冒頭からいきなりロボットの心がどうたらこうたらと書き出して大まかに印象に残ったシーンもあげましたが、ここまでの中ででてきたロボットの心と寿命という項には、ロボットが人と寄り添うには?という意味で意味があると思います。

まず心ですが、ロボットと人が寄り添うにあたって、心を持つか持たないかで言えば、少なくとも「隣人」として接するのであれば心は必要だというのが私の意見です。
(ロボットの軍事利用云々といった懸念事項もあると思いますが今は置いておきます)
今後人間と同じように汎用的な知能を持ったロボットが(本当に2045年に出来るのかわかりませんが)できた場合、人間と同じようにコミュニケーションをとれることは精神的な意味でも現実的な意味でも必要だと思います。
戦場でドローンに感情移入してしまった、なんてお話もあるようですが、コミュニケーションは心と心のやりとりであり、互いを理解する手段だと思います。
なんだかよくわからないコミュニケーションをとれないものよりも、コミュニケーションをとれるものの方が信頼関係は築けるでしょう。
現実的な意味でいえば、曖昧なものである人間側の心と2進数がベースにあるロボットの動きとではパズルのピースの形が違っていてそのままでは上手くつながらないでしょう。それぞれの間を媒介するために、ロボット側にも心やそれに変わる何かを持たせる必要があるとおもいます。

寿命については、普通に考えれば機械の身体には部品の耐用年数があるわけで、定期的なメンテナンスは必要なわけですが、それに対して記憶やソフトウェア的な部分は残ります。
つまりその気になれば人間が死んでいく中でロボット達は身体を交換し続けて生きながらえることが出来ます。
ATRIではそれを避けるために先述の通り記憶が消えるようになっていましたし、似た作品ではプラスティック・メモリーズでも似たようなテーマは扱われていました。
では、そうした寿命を設定することの是非とは何でしょうか?
私の意見としては、やはり「ロボットと人間の隣人として接するため」につきるのかなと思っています。
人間と同じように心と寿命を持ち、色々な経験をして何かを成して、最後に終わること。隣人としてともに喜び、悲しむことが出来る存在であること。
感情的な理由にはなりますが、少なくとも利用するためだけに与えられたものである、と思うのはやはり悲しいかなとも思います。

個人的にはAIが持つ心とは何か?という視点には非常に興味を感じましたし、これをきっかけにわざわざPython機械学習の勉強まで始めてしまいました。
せっかくなので機械学習もやりたいですがもたもた勉強してるので時間がかかりますね…年齢も年齢なので早く何か形にしたいところです。

話は大分ATRI本編の話からそれていますが、私としてはこの作品はとても面白かったですし、非常に意味深いものを得られたとも思っています。
せっかくなので体験版だけでも触ってみて頂けると喜びます。

長くなりましたが今日の記事はここまで。