隠居月の雑多な書き処さん

ゲームの感想とか何となく書きたくなったことを雑多に文字にして放り込むところです。Twitterには投下したくないネタバレとかえっちなやつの感想とかも書きます多分。

【感想】さくら、もゆ。-as the Night's, Reincarnation-

この記事は18禁ゲームに関する感想です。未成年の方は閲覧厳禁です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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さくら、もゆ。-as the Night's, Reincarnation- 感想です。

例によって18禁タイトルです。

FAVORITE作品は初でしたが、ちょこちょこ気になるところもありつつしっかり面白い作品でした。

実は1回書いた後内容が消滅したので当初イメージした内容からは変わっている部分もありますが、大筋は拾っている…はず。

 

感想ですが、シンプルにシナリオの分量自体も多めなのですが、特に後半になるにつれてシナリオの構造が複雑になっていくので、情報を都度整理しながら進めたりとやりごたえがありました。考察が好きな方なんかは読み進めながら楽しめるのではないでしょうか。

一応要素としてはSFものに出てくるようなものも登場してきますが、基本的にはファンタジー寄りの作品なのでそのあたりは少し注意が必要かもしれません。

キャラクターも魅力的な部分が多く、私は全編読み終えた今では主要キャラクターはほぼ全員好きです。何とは言いませんが私はどちらかと言えば控えめな方が好きなのでそういうキャラクターが多いのもよかったと思います。

 

注意点としてはシナリオの本筋に絡む部分で主要な登場人物がマッチポンプを回している印象を受ける部分が多いことでしょうか。

まあ物語というと多かれ少なかれマッチポンプじみた描写になってしまうことはあるかもしれませんし、キャラクターも学生なのでやらかしてしまうこともあるでしょうが、このあたりの描写の結果、自分の中でメインヒロインの好感度に響いてしまった場面がありました。そこでヒロインをさげる意味あるの…?と思ってしまった場面も正直有ったので、あらかじめ体験版をやってみるなどして描写が合うかどうかは確認した方がいいかもしれません。

 

細かい描写には気になる部分もありましたが、全体としてはシナリオの構造がしっかりしていましたし、最後の結末まで面白く進められたと思います。

体験版だけでも触ってみるのがよろしいかと。

 

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【注意】
以降ネタバレを含む感想になります!
未クリアの方やネタバレを気になさる方はブラウザバックをお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ここからネタバレあり感想です。

まあ感想と言いつつ後半はほとんど"夜"の話ですが。

 

最初に忘れないうちに感想を書いてしまうと、全体の印象としてはお話としてはタイトルに偽らない美しいシナリオなのですが、背景部分を掘り下げていくと暗い面もよく出てくるお話になっていたと思います。

実は姫織、千和、ハルの3人は存在していた時系列がバラバラで、時系列がバラバラだからこそ描けるサブキャラ同士の関係性が見えてきたりと読んでいて面白い要素はかなり多かったです。

グランドルートであるクロルート(隠しヒロインにましろがいますが)では前半でのクロの語りによる種明かしが秀逸でしたね。若干話が唐突だった感と話の長さはありますが、よくよく考えればここに至るまで大雅自身の魔法についてや、行動の基準になっていた部分が描写されておらず、それをこのタイミングで回想として入れてきたのは良かったと思います。"夜の王"についてなんかも情報がほとんどなかったですし。

これを踏まえて、それまでの個別ルートと同様にクロと大雅が幸せになるための物語を紡いでいく流れだったり、挿入歌を入れ込む場面だったりの流れがとてもきれいで夢中になって読み進めていました。

 

個人的には隠しヒロイン(攻略対象と言っていいかは微妙ですが)であるましろが一番好きです。ビジュアルも好みでしたが、シナリオを読んでいて一番幸せになってほしくなったのが彼女でした。真大雅との恋模様や、この人たちと暮らしたい、とか子供が欲しい、とか挙げていた彼女の願いがグランドルートの結末でちゃんと成就していたので個人的には大満足です。

最後の結末部分といえば姫織、千和、ハルがグランドルートでは子供時代しか描かれていなかったのでその後どうなったのかが気になっていたのですが、どうなったのでしょう。兎蛙姉弟は予想がつきますが。

グランドルートで"夜"の在り方が死んだ人間の物語が本として所蔵されていく形に変化していましたが、あらゆる可能性の結末においてどのヒロインも幸せになれた、という解釈でいいんでしょうか。"夜"自体はあらゆる時空に偏在しているわけですし、その一つ一つに物語がある、ということでいいのだとは思いますが。

 

あとは楽曲ですね。どの曲もよかったですが、「さくら、もゆ。」は劇中局として曲自体の意味合いがシナリオ上非常に重要な意味を持たせられていますし、2ndOPの「輪廻」も大雅とクロとの関係性を表していて非常に良かったと思います。

 

実をいうと個人的な意見としては1回ぽっきりしか使えない奇蹟や魔法、偶然に頼って不幸を乗り越えようとするのはあんまりよくわからなかったりします。本来ならそれらの偶然ではなく自分の力による必然で乗り越えた方がいい。大人側の価値観と言ってしまえばそれまでですが、仮にその1回をそうしてやり過ごしたところで 、また同じように不幸が訪れればその時に折れてしまう可能性があるわけですし。

そういう意味でもグランドルートで大雅が願った奇蹟や、細かくは描写されませんでしたがグランドルートのハルの奇蹟はこの作品の魔法の中で特にきれいに感じました。せっかく奇蹟を願うならせめて前向きな祈りからであってほしいです。

 

 

とまあ、おおよその感想を書いたところでここから"夜"について。

この作品の最大の構成要素はシナリオの内容的にも構造的にもやはり"夜"でしょう。

良い出来事も悪い出来事もすべてここに集約されています。

 

"夜"では魔法の力によって人々のあらゆる夢や希望が叶いますが、魔法を使うには本人がそうと納得できる"代償"を支払う必要があります。

その成り立ちは大人たちにないがしろにされてきた子供たちが願った夢である、という暗い背景があるためか、彼ら彼女らが大人たちから言われていた「何かを得るなら何かを対価にしなければならない」という言葉すらも忠実に再現して、あらゆる夢や希望が叶うと言いつつも都合のいいものでもないわけですね。

奇蹟とか魔法とか聞こえのいい言葉を使うよりかは、よく言えば頑張った自分へのご褒美、悪く言えば悪魔との契約とかそういう言葉の方が根っこの部分をより忠実に表しているような気もします。

 

実際ヒロインズが過去の出来事に対する後悔から生み出した魔法に設定した代償も各々の命であり、自らの犠牲の上にそれらを解決しようとしています。その結果主人公である大雅も自らの魔法による代償を支払ってそれを救う、というような流れが個別ルートの基本になっています。

自己犠牲の是非については本当に必要であれば多かれ少なかれ結構な人がやるでしょうし別にいいとして、

個別ルートで各々の魔法について掘り下げていく初めの部分がどうにもワンパターンだったかなという印象はあるかもしれません。

 

 

それから"夜"に関して疑問に思った点。

"夜"が存在する真の目的は呪いにより分かたれた兎蛙姉弟の逢瀬のためであり、同時に子供たちを守るために大人たちが維持していた、ということが明かされますが、私用である前者はともかく後者に関しては作中でも何度か言われる通り卵が先か鶏が先か、という部分が少しあいまいな気もしています。

はじまりの"夜"で黒い子供たちがかけた呪いの効力にもよるのかもしれませんが、この大元の原因としてはしょうもない大人たちが子供たちをないがしろにした結果黒い子供たちの呪いが発生し、正常だった大人たちをも狂わせるというもののはずです。

"夜"はあらゆる時間軸に同時に偏在していて、どこかで途絶えれば同時にあらゆる時間軸からも消えるということですが、仮にこれが"夜"が消えることで呪いの効力が薄まるのであれば、そもそも"夜"を維持する必要自体がなく、問題が自然解決することになります。わざわざ"夜"を維持するために子供たちを犠牲にし続けなくともいいわけですね。

さらに言えば"夜"が偏在していて、いつの時系列から存在している、とかそういった始点や終点がないのであれば、はじまりの"夜"もまた現在の"夜"と同じものになりうる気がしますが、これも特に描写はなかった気がします。(最初の時系列でいえば別物なのでしょうが…)

ファンタジー作品なので突き詰めていくと矛盾になってしまいそうな部分が出てきてしまうのも仕方がないのかもしれませんが、ハルルートで過去改編や並行世界的な話が出てきたりとSF寄りの要素も登場してかなりシナリオの構造が複雑になっているので、公式から見解が出ているのであれば確認したいところです。

(タイムパラドックスは起きないようになっていましたが)

 

 

ここまで読み進めていただけばわかると思いますが、半分くらい"夜"についてです。

お話としては面白かったですし、シナリオの構成だったりキャラクターだったりと面白い要素がとても多く、おすすめ度合いは個人的には高めかなと思っています。

残念ながら予想外の刺さり方、想定以上の刺さり方をするには至らなかったですし、気になる部分もないではなかったですが、"夜"に関する内容で色々考える部分が多くて、全体としては楽しくプレイできたと思います。

 

とまあ、こんなところで感想終わります。